
土曜日の午前中、68歳になる母はいつも住宅番組を見ている。 独創的な建築を見ながら「この家はよかね〜、これはちょっとね〜」と独り言を言うのが母の日課だ。
そんな母が、ポツリと言った。 「よかね〜。私が若ければ、頑張って家を建てるのに。最後は、新しい家で死にたいね」
その言葉が、胸に突き刺さった。 母は、私の借金が順調に減っていると信じている。だが、現実は真っ赤な嘘だ。 減るどころか、金利15%という重圧に毎日首を絞められている。
中学の頃から母を「母さん」と呼んだことはない。「おい」とぶっきらぼうに呼ぶことしかできない。今更、気恥ずかしくて呼べないのだ。 そんな私に、母は年に一度「借金は減りよるとね?」と聞いてくる。 私は面倒くさそうに「減りよる、減りよる」と答える。嘘だ。
5年前、私は泣きついて母から196万円を借りた。 母が郵便局の定額貯金と、銀行の積立NISAをすべて解約して渡してくれた全財産だ。 その時の封筒は、なぜか今も捨てることができない。

一度は完済した。しかし、翌月には「半分くらいならいいか」と100万円を借りた。 当時は罪悪感などなく、むしろ借りられることが嬉しかった。自分の弱さから目を背け、嘘で塗り固めた人生を歩んできた。
現在の借金は560万円。 私は42歳、母は68歳。
今から任意整理をすれば、10年間はローンが組めない。完済してローンが組めるようになる頃、私は52歳、母は78歳だ。 母が元気でいる保証はない。でも、今本気にならないと、私は一生後悔する。利息だけで年間85万ほど、頑張るしかない。
「5年で完済、6・7年後に家を建てる」
世間から見れば馬鹿げた挑戦かもしれない。 でも、私は決めた。 昨年、大人になって初めて、母に5,000円の靴を贈った。 その時に感じた、何とも言えない嬉しい気持ち。あの一歩を、本当の親孝行に繋げたい。
「普通の息子」になりたい。 42歳、自分の弱さと向き合い、母の夢を叶えるための必死の戦いを、ここに記録していく。これ以上嘘はつかない。
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